川崎市、旭タンカー株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社の3者が、令和3年9月30日に締結した「川崎港における電気推進船の普及促進等に関する基本協定書」に基づいて協力して進めている世界初のEVタンカーの運航に係る取組として、この度、川崎港で建設を進めていたEVタンカー用の給電ステーションが完成し、EVタンカー「あさひ」が接岸しました。
EVタンカー「あさひ」は、大容量リチウムイオン電池を動力源とし、同船から排出されるCO2、NOX、SOX、煤煙等のゼロエミッション化により環境負荷を低減するとともに、騒音や振動を抑えられるため、乗組員の労働環境や港湾周辺環境の改善も期待できます。
川崎港の夜光けい留さん橋(神奈川県川崎市川崎区夜光3丁目2番地の5)に設置した給電ステーションは、EVタンカーへ電気を供給し、搭載されている大容量リチウムイオン電池の蓄電を行います。EVタンカーに供給する電気は、実質100%再生可能エネルギー由来の電気であり、年間約400トンのCO2を削減することが可能となります。これは、一般家庭約300世帯分の年間消費電力量に相当いたします。
4月14日には川崎港におけるEVタンカー給電ステーションの完成と、EVタンカー「あさひ」の接岸を記念して式典が開催されました。
【主催者】
川崎市長 福田紀彦氏(写真右から3人目)
旭タンカー株式会社 代表取締役社長 中井和則氏(写真左から3人目)
東京電力エナジーパートナー株式会社 代表取締役社長 秋本展秀氏(写真右から2人目)
【来 賓】
公益社団法人川崎港振興協会 会長 齋藤文夫氏(写真左から2人目)
株式会社e5ラボ 代表取締役社長 一田朋聡氏(e5コンソーシアム※関係者)(写真左端)
株式会社e5ラボ 最高技術責任者 末次康将氏(e5コンソーシアム※関係者)(写真右端)
川崎市、旭タンカー株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社の3者は、今後も、ゼロエミッション電気推進船の普及を通じた新しい海運インフラサービスの構築と、環境への負荷の少ない持続可能な循環型社会の実現に向けた先導的な事業として、EVタンカーの運航に係る事業を協力して推進していきます。
EVタンカー「あさひ」について
- EVタンカー「あさひ」は、旭タンカー株式会社が建造した世界初となるピュアバッテリー電気推進タンカーです。
- 主に舶用燃料供給船として東京湾内に就航します。
- 本船は、川崎港の給電ステーションから供給された電気をエネルギーとして運航することで、CO2 をはじめとした温室効果ガスのゼロエミッション化を達成するだけでなく、騒音と振動を抑えることにより乗組員の労働環境と港湾周辺環境に配慮した次世代型の船舶です。
- 本船の大容量バッテリーは、陸上に電力を供給することができる機能を搭載しており、災害時の非常用電源としてBCP(事業継続計画)対策や地域LCP(生活継続計画)に繋がる新たな役割を担うことが期待されます。
- 本船は一般的な内航船と一線を画したデザインであることも特徴です。外観は旭タンカーのブランドカラーである赤をモチーフに、新しい時代を印象付ける多様な配色としました。また、内観はEV船ならではの快適な船内環境を更によくするため、壁面書棚や吹き抜けを取り入れることで、快適な乗組員の労働・生活環境を整えています。
- 令和5年3月には、2隻目のEVタンカーの竣工を予定しています。
<EVタンカー「あさひ」主要目>
(1)寸法 全長62.00m / 全幅 10.30m / 型深さ4.70m
(2)船級 ClassNK 日本海事協会
(3)積載貨物 重油
(4)総トン数 492 トン
(5)速力 約10 ノット
(6)タンク容量 1,277m3
(7)推進装置 推進装置:川崎重工業株式会社製 川崎バッテリーシステム
アジマススラスター 300kW x 2 基
サイドスラスター 68kW x 2 基
(8)バッテリー容量 3,480kWh
EVタンカー給電ステーションの概要
給電ステーションは、引込電柱、受電設備、ケーブルマネジメントシステム、コネクタにより構成されており、本事業の推進と実現に向けて東京電力グループが独自に開発しました。
EVタンカーのタラップ先端に設置された船側コネクタとケーブルマネジメントシステムの陸側コネクタを接続し、船上の陸電操作盤にて給電操作を行います。
EVタンカーが1日(約12 時間)に運航するために必要な電力を、夜間停泊中(約12 時間)に充電可能な大容量給電システムとなります。
独自開発したケーブルマネジメントシステム(潮位や波による船舶の揺れを吸収)や、国外で実績があり信頼性の高い船舶用給電コネクタを採用することにより、安全で負担の少ない充電作業を可能としています。
<仕様>
(1) 受電電圧 6.6kV
(2) 給電容量 375kVA/隻
(3) 同時給電可能隻数 2 隻
(4) エネルギーサービス事業者 日本ファシリティ・ソリューション株式会社
(5) 開発・施工 株式会社東光高岳