羽田空港で自動運転パーソナルモビリティを(家族が)試してみた

 いよいよゴールデンウィークに突入します。コロナ禍になり、この2年間は我慢のゴールデンウイークでしたが、今年は外出自粛要請もなければ緊急事態宣言、さらにまん延防止等重点措置もありません。最大10連休、取得できる人もいるなど、今年のゴールデンウィークは久々に旅行や行楽などで全国各地、賑わうことでしょう。

 そんななか、まだゴールデンウィークは始まっていませんが、筆者は家族で石垣島に旅行に出かけることにしました。

 羽田空港第2ターミナルからANAに乗って向かいます。

 空港内はゴールデンウィーク直前でも平日だったためか、さほど混雑していない印象です。実際のところ、スーツ姿のビジネスパーソンを数多く見かけました。

 朝、搭乗しようと手荷物検査場を通過すると、自動運転パーソナルモビリティ(自動運転電動車椅子)「WHILL(ウィル)」を発見しました。WHILLは日本のスタートアップが開発し、毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されているテクノロジー展示会「CES」にも出展し、世界的に様々なところから出資を受けるなど注目の企業です。筆者も日本だけでなく、CESで何度か取材したことがありました。

 羽田空港では2019年から第1ターミナルで実証実験、初期導入と運用を拡大し、2021年6月からは運航範囲を第2ターミナルにまで拡大。第1、第2ターミナルの出発階全域で使えるようになりました。

 筆者の家族は2年前に膝の手術をしており、普段は足を引きずりながらの歩行、生活を余儀なくされています。家族3人で出かけるときも、5歳児が先頭をつっぱしり、それを47歳の父親が追いかけ、その遙か後方を40代の母親が足を引きずりながらついていくという光景が広がります。

 せっかくなので、家族にWHILLを体験させることにしました。

 手荷物検査場を出ると、WHILLが複数台並んでいる乗り場があります(第2ターミナルには2カ所)。WHILLに座ると、左手の部分にスマートフォンのようなタッチパネルがありますので、そこから行きたい場所を選択するだけです。ただ、自分が利用する搭乗ゲートをピンポイントで指定することはできず、ターミナル内の4カ所のエリアから選べるようになっています。

 WHILLの背面には荷物を置けるスペースもありました(最大10キロまで)。

 実際に走り出すと、かなりゆっくりとしたスピードとなっています。速度は時速2.5kmとなっており、人の歩行速度である時速4~5kmと比べても遅いのがわかります。

 WHILLに乗る母親を子どもと父親が周りから見守る感じで、ターミナルを進んでいきます。途中、子どもがWHILLの前に立ってしまうと、ちゃんとWHILLは危険と判断してストップしてくれます。

 ディスプレイには目的地まであと何分で到着するかの表示もありました。ただ、やはり時速2.5kmと遅いため、出発時間ギリギリに乗るのはお勧めしません。時間に余裕を持って、乗った方が良さそうです。

 目的地に到着後、60秒のカウントダウンが始まり、ゼロになると、WHILLは自分で、無人状態で出発地に自動運転で帰って行きます。人が乗っているWHILLにはさほど違和感を抱きませんが、無人で勝手に走って行く様子にはなんだか未来感がただよっています。

 実際にWHILLに乗った家族によれば「人に気を遣わなくていいのがいい。他人に車椅子を押してもらうというのは、ついつい遠慮がちになっていました。また、普段、車椅子に乗っていないと、右や左に曲がるのも大変。WHILLだったら、勝手にすいすいと動いてくれるのが魅力。空港だけでなく、病院にWHILLがあるといいかも。忙しい看護婦さんに車椅子をお願いして移動するのはちょっと気が引けると感じていました。また、水族館のようなレシャースポットにもWHILLがあると、家族と一緒に館内を回って楽しめるような気がしました」とかなり気に入った様子でした。

 身体の不自由な人だけでなく、妊婦さんや高齢な方など、誰もが気兼ねなく、気軽に移動できる手段として、WHILLが活躍できる場所はかなりあるのではないでしょうか。

 

-MaaS, MicroMobility, 石川温『モビリティの達人』
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