空飛ぶ自動車「PAL-V」約4000万円の実車をチェック

2022年6月12日

道路では2人乗りの小型自動車、空ではプロペラで飛ぶことができる「陸・空両用移動機」とも呼べる空飛ぶ自動車「PAL-V Liberty」がドイツ・ハノーバーで開催されたHannover Messe 2022(2022年5月30日 - 6月2日)会場で展示されていました。残念ながら走行・飛行テストは行われなかったものの、実車に触れることができました。

空飛ぶ車「PAL-V Liberty」

【Hannover Messe 2022レポート】PAL-V Libertyはオランダのパルヴィインターナショナル(PAL-V International B.V.)が開発した乗り物です。小型飛行機にも見えるボディーには前輪1つ、後輪2つを備えています。またルーフにはプロペラ、後部にもプロペラと尾翼が格納されており、空を飛ぶ際はこれらが引き出されてプロペラの推進力で飛行します。このような動作で飛ぶ乗り物を「ジャイロプレーン」「オートジャイロ」と呼びます。

ルーフ部分にプロペラを収納

プロペラを収納し陸路を走行する際のドライブモードでは、本体のサイズは全長4.0メートル、全幅2.0メートル、全高1.7メートル。正面から見ると空気の取入れのためと抵抗を抑えるための流線型構造になっており、コックピット部分の幅はさらに狭くなっています。最大乗車人数は2名、最大荷物積載量は20kgです。

フライトモードに切り替えると上部プロペラが開き、尾翼も後ろへ伸びヘリコプターに似たスタイルに変形します。フライトモード時のサイズは全長6.1メートル、全幅2.0メートル(本体部)、全高3.2メートル。プロペラのローター径は10.75メートルとなります。

フライトモードへの変形は見られなかった。展示では写真で説明

コックピットは窓ガラスを開けて内部を見ることができなかったため、こちらも展示された写真をお見せします。自動車とヘリコプターを合わせたようなものになっており、運転席側にはハンドルを備えています。また助手席側にも多数の計器が並んでいるのが見えます。当然ですが空中を飛行するためには相当するライセンスが必要であり、国や都市によっては飛行可能なルートも決められています。

ハンドルを備えたコックピット。ヘリの計器も搭載される

後部側を見るとナンバープレートが掲示されています。PAL-V Libertyは2021年にEUの公道を走る認可を取得。ナンバーをつけ自動車として道路を走ることができます。なお空中飛行についても欧州航空安全機関(EASA、European Union Aviation Safety Agency)認可を取得済です。

背面には自動車のナンバーも取り付けられている

PAL-Vは100リットルのガソリンタンクを備え、ヨーロッパのSP95、SP98、E10のガソリンが使用できます。エンジンはドライブモード用に100馬力を搭載し最高速度は160Km/h、燃費は7.6リットル/100km(13.2km/リッター)。またフライト用には200馬力のエンジンを使用し、最低離陸距離は180メートル、高度3500メートルの高さを最大160km/hで飛行できます。最大飛行距離は500キロメートル(30分の予備燃料込み)、最低着陸距離は30メートルとのことです。

ガソリンスタンドでの給油に対応している

PAL-V Libertyの価格はベーシックモデルの「Sport Editon」が29万9000ユーロ(4228万円)、上位モデルの「Pioneer Edition」が49万9000ユーロ(約7056万円)でプレオーダー中です。先行で限定販売された90台は中東などに輸出されたとのこと。日本では法令の関係で導入は難しいでしょうが、将来は滑走路代わりになる開けた土地に直線道路のある地方エリアなどで自在に移動できる「陸・空タクシー」としての利用も期待できそうです。

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山根康宏/Yasuhiro YAMANE

香港在住の携帯電話研究家。スマートフォンを中心にIoT、スマートシティー、プロダクトデザインなどターゲット範囲は広い。年の大半を海外取材に費やしており、モビリティーの進化を日々体感している。

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